新たに6種類の合成着色料を中止へ
トランプ政権が合成着色料など食品添加物の大幅規制強化に動き出したことは前号でお伝えしましたが、その流れが一段と加速しています。
保健福祉省と傘下の食品医薬品庁(FDA)は4月22日、石油由来の合成着色料の使用を段階的に廃止すると発表しました。
まず数ヵ月以内に、シトラスレッド2号とオレンジBの認可を取り消す手続きを開始。
続いて、2026年末までに、食品業界と協力しながら、緑色3号、赤色40号、黄色5号、黄色6号、青色1号、青色2号を流通から排除する計画です。
同時に、数週間以内に4種類の新しい天然着色料を認可し、他の天然着色料についても審査と承認を加速する方針です。
さらに、国立衛生研究所(N I H)と連携し、食品添加物が子どもの健康と発達にどんな影響を与えるか、包括的な研究を実施する計画も明らかにしました。
バイデン政権が2027年1月15日までに使用を中止すると発表していた赤色3号は、期限を前倒しするよう食品業界に要請すると述べました。
マカリーFDA 長官は「小児糖尿病、肥満、うつ病、ADHDなどの病気が子どもたちの間で蔓延するなか、医師や小さな子どもを持つ親たちの間では、石油由来の合成着色料の潜在的な影響に対する懸念が高まっている」と今回の措置を講じる理由を説明。
そして、食品メーカーはヨーロッパやカナダ向けの製品では、有害な合成着色料の使用をすでに止めていると指摘し、アメリカ国内向けの製品に対しても同様の措置をとるよう要請したことを明らかにしました。
有権者に人気のケネディ長官
有害な食品添加物追放の旗振り役が保健福祉省のケネディ長官であることも前号で指摘しました。
ケネディ長官は医療用ワクチンの有効性を否定するような言動を繰り返していることから、就任前、そして就任後も主要メディアや一部の専門家から激しくたたかれています。
しかし、メディアの批判的な論調とは対照的に、ケネディ氏を支持する米国民は意外とたくさんいます。
ハーバード大学と調査会社ハリス・ポールによる最新の世論調査では、ケネディ長官に対する印象を「非常に好意的」または「好意的」と答えた人は、合わせて44%に上りました。トランプ政権内ではトランプ大統領の46%に次ぐ高さです。
一方、ケネディ氏に対する印象を「非常に好意的でない」または「好意的でない」と答えた人は37%と比較的低く、その結果、「非常に好意的」「好意的」から「非常に好意的でない」「好意的でない」を引いた正味の好意度は7%となりました。それに次ぐのはバンス副大統領らの2%で、ケネディ氏の好意度
が群を抜いて高いことがわかります。
ちなみにトランプ大統領の正味の好意度は、「トランプ嫌い」が多いことが響いてマイナス1%でした。
強力な援軍
ケネディ氏の高い人気を支えているのが「クランチー・マム(自然志向のママ)」の存在。
メディアも「ケネディ氏はクランチー・マムのヒーロー」(ウォール・ストリート・ジャー
ナル紙)、「クランチー・マムはケネディ氏を最も熱心に支持するグループの一つ」(ニューズウィーク誌)などと報じています。
クランチー・マムは、簡単に言うと、自然や先人の知恵を重んじるライフスタイルを実践し、それを子育てにも取り入れている母親たちのこと。
例えば、彼女たちは、食べ物に関しては農薬や化学肥料を使わない昔ながらの有機農産物を選んだり、フードテックを駆使した超加工食品を避けたりします。
また、現代医学や現代科学に全幅の信頼を置くことはせず、そのためワクチン否定派が多いのも特徴です。
ケネディ長官は3月中旬、ホワイトハウスにクランチー・マムたちを招いて、円卓会議を開きました。
その中の一人が、インスタグラムで200万人以上のフォロワーを持つ「フード・ベイブ」こと活動家のヴァニ・ハリ氏。
もともと民主党支持者でしたが、昨年の大統領選では無所属のケネディ氏を熱心に応援しました。
ハリ氏は同席したトランプ政権の閣僚らに対し、欧州連合(EU)が安全上の理由から禁止している食品添加物をアメリカも禁止するよう訴えました。
ケネディ長官はクランチー・マムたちを「MAHA(マハ)マム」と呼びます。
MAHA は、ケネディ長官が昨年、大統領選を戦ったときのスローガン「アメリカを再び健康に」の略語です。

アメリカの政治を左右するママたち
実は、アメリカのママたちは、たびたび政治に大きな影響力を及ぼしています。
1992年、現職有利と言われる大統領選で、クリントン氏が現職のブッシュ大統領を破りましたが、勝因の一つとされたのが、都市郊外に住み、子どもをサッカーの練習に車で送り迎えする「サッカー・マム」がクリントン氏に投票したことでした。
バイデン氏が当時現職のトランプ大統領に勝利した一因は、やはり郊外に住み家族の身の安全を最優先する「サバーバン(郊外)・マム」の支持を得たことでした。共通しているのは、お金に多少の余裕が
あり、社会問題に関心が強く、アクティブなこと。これからしばらく、クランチー・マムたちの動向から目が離せません。
